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文学を訪ねる温泉紀行17. 七沢温泉 小林多喜二ゆかりの宿・福元館 [文学を訪ねる温泉紀行]

文学を訪ねる温泉紀行17 神奈川県厚木 七沢温泉 小林多喜二ゆかりの宿・福元館
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福元館の露天風呂

 神奈川県厚木、大山の東稜に位置する東丹沢には、飯山、別所、広沢寺、七沢温泉といった静かな温泉郷がある。七沢温泉は江戸時代宝永年間(1772~1780年)に発見されたといわれ、文久年間(1861~1863年)には、湯治客や大山詣での参詣客で賑わっていた。湯は強アルカリ泉で、温度は23度で加温している。昔から子宝の湯といわれ、胃腸病、神経痛、婦人病、高血圧症などに効能がある。昭和2年(1927年)には旅館が3軒、現在は6軒。明治22年(1889年)の七沢鉱泉浴客人員は年間6,856人の記録が残る。

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七沢温泉の風情・6軒の宿が散在

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福元館正面

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福元館のロビー・フロント

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福元館の大女将古根村喜代子さん

 福元館は七沢温泉最古の宿といわれ、源泉の濃度も最も濃いと宿の自慢である。大女将古根村喜代子さんは、「足が悪くて・・・・」といいながらも和服姿の端正なお姿で話をしていただいた。小林多喜二ゆかりの宿と判ったのは、大女将が、平成12年(2003年)3月に伊勢原在住の多喜二研究家蠣崎(かきざき)澄子さんからの突然の電話「多喜二が泊まっていたのは、福元館さんではないですか?」に、つい「はい、そうです」と言ってしまってからだ。喜代子さんは昭和23年(1948年)に嫁に来た際、先代の女将ヤエさんから、「小林多喜二をかくまって離れに泊めたことを、口外しないように」と強く口止めされていた。以来、実に54年間、小林多喜二を匿ったことをだだ一人心に秘めていたのだ。

 小林多喜二は小樽から上京したが、治安維持法違反で起訴され、昭和5年(1930年)6月に豊多摩刑務所に収容され、翌年1月に保釈される。常に素行を監視され再検挙の危険に晒されていた。同年3月、多喜二は療養と「オルグ」や文芸評論執筆のために福元館の離れに逗留した。離れは、本館と道路を挟んだ高台にある木造の和室(3+6+8畳トイレ付)で、大正6年(1917年)に建築され、夏休みの学生などの合宿用に使われていた。約1年いた多喜二を世話していたのは、仲居の「おうめ」さんだった。玄関を入ると左手の3畳の間の古机でいつも丹前姿で書物をしていた。風呂上りに浴衣を着せる時に、多喜二の首から背中にかけて拷問の跡である無残な傷跡を見たという。女将のヤエは、彼岸花の根を摩り下ろし、卵や小麦粉、酢をまぜて湿布薬を作り貼り替えてあげていた。官憲に見つかれば、匿った罪で商売はおろか、命がけの行動だった。
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本館向い高台にある「離れ」

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玄関すぐの3畳間のしゃれたガラス窓

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修理中の「離れ」部屋

私が福元館の「離れ」を尋ねたのは、2010年10月10日。多喜二を慕うファンのために、「離れ」を 資料館として整備するため大工さんに頼んで修理中だった。玄関すぐの間のしゃれたデザインのガラス戸は当時のままだ。大工さんが床下で板に書かれた鯉の絵を見つけた。これは多喜二が描いたものなのかはまだ判らない。新館が昭和55年(1980年)に建てられた時に多喜二が残していったグッズ(かばん)が焼かれてしまった。今思うと多喜二の貴重な資料が失われ、とても残念だ。離れの前に梅の古木が生き延びている。案内していただいた酒井礼子さんは「私が小学2~3年の頃、この梅の木を覚えています。昔はこの坂は土造りで、どんどん崩れて、梅の木の外側はもっと残っていた」と感慨深げだ。大女将は、私が東京の青梅から来たというと「懐かしい。昭和37年頃まで、青梅縞の反物を浴衣や丹前用に買いに行っていたのよ」

 浴室は男女2ヶ所あり、男性用は大浴場で横が2~3m×5.5mのタイル張り。女性用は小さい内湯1.5m×2mと露天風呂があり、13時~20時で男女交替制になっている。地下13mから自噴の強アルカリ泉が毎分7.1リットル湧出。源泉は23度で加温、飲泉もできる。小浴場のすぐ裏手に源泉があり、源泉が近い分つるつる感が強い。多喜二がいた頃の湯船は「七沢石」造りの湯船(2×3m)で隣に水風呂もあり、多喜二は夕方に入浴に来ていたという。
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大浴場内湯

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小浴場内湯

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露天風呂

フロントの壁に多喜二の直筆の色紙「我々の芸術は、飯を食えない人にとっての料理の本であってはならぬ 31.11.10 小林多喜二」を見つけた。これはある大学の先生が銀行の貸金庫に預けていたものをゆかりあるこの宿で保管した方がよいと贈られたものという。
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フロントに掛けられた多喜二の色紙

「蟹工船」で有名な多喜二のプロレタリア作家時代は、4年4ヶ月という短い期間だった。「1928年3月15日」という最初の作品を世に出して以来、前半が小樽、後半が東京での作品である。「工場細胞」「オルグ」「党生活者」では、小樽の日露漁業の缶詰の缶を作る、蟹工船の缶を作る工場での戦いを描いたものであり、作家生活の丁度中間の時期に当たる。ここには「オルグ」の原稿などの直接的な資料は残されていないが、執筆された古机や部屋の佇まいなどが再現して残されるのは喜ばしい。11月20日(土)に多喜二資料館(名称はまだ判らない)が完成するので、ぜひ又伺いたいと思いながら福元館を後にした。

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文学を訪ねる温泉紀行
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コメント 7

銀狼

ご来訪・nice!頂き、ありがとうございました^^
by 銀狼 (2010-10-11 23:51) 

レン

国家権力による、思想や言論に対する弾圧・・・
今年の【ノーベル平和賞】を、想起してしまいます。

今現在も、思想や言論の自由のために戦っている人々に
エールを送りたい・・・です。
by レン (2010-10-12 16:06) 

muratp

niceありがとうございます!
by muratp (2010-10-12 20:12) 

アルマ

ご訪問&nice!ありがとうございます!

昔からある歴史ある宿って感じで良いですね!

by アルマ (2010-10-12 20:57) 

hanamura

文学を訪ねる温泉 貴重なお話もあって興味深く拝見しました。
七沢温泉…綾瀬に住んでいたとき休日サイクリングコースでした…
あれは平成9年~12年だったから、まだ発掘(?)前だったんだぁ!
by hanamura (2010-10-17 10:36) 

さる1号

ご訪問&NICE有り難うございます。
興味深い記事が多く参考になります。

by さる1号 (2010-10-17 15:07) 

やまべぇ

はじめまして。御訪問ありがとうございました。
七沢温泉ですか? なんか観光地してるわけでもなく、ひっそりとした感じ、風情があっていいですね~
by やまべぇ (2010-10-19 18:15) 

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